本書は、「先生!シリーズ」の“番外編”である。なぜ、私は“番外編”を書いたのか?
本家「先生!シリーズ」と何が違うのか?………そういったことについて、「はじめに」でお話ししたい。そこには、私がこれまで誰にも語ることのなかった、深い、深い、(ほんとはあまり深くない)思いがあるのだ。
私は、自然豊かな山村で育った。まわりに野生生物がたくさんいたのだ。そして、父親が生物が好きだった。そんなこともあって、私は、気がついたときには、生物、特に動物が大好きな少年になっていた。
当然のことながら父に頼んでイヌを見つけてきてもらい、飼うようになった(世話はもっぱら母と兄がやってくれていたような………)。私はイヌ(トムという名前をつけていた)と一緒に山深く分け入ったり、家の近くの山林や川や田畑(いわゆる里山)を駆けまわったりした。
もちろんトムばかりと過ごしたわけではない。父が買ってきてくれたカナリアや、私が野山で捕まえた昆虫、カエル、イモリ、いろんな動物が私とつきあってくれた。兄や友だちとも野山や川でよく遊んだ。
ところで、父は小学校や中学校の教員をしていたため、先祖代々受け継いだ田んぼや畑、そして広い山林の管理は休日に集中してやらなければならなかった。そして父は、子どもの教育について次のような信念をもっていた。
「子どもは家族のなかで、自分にできる役割を担い、それを果たすなかでよりよく成長する」 新品未使用 F1 時計 1992 年 壁掛け 希少,
これらの状況が合体するとどうなるか。読者のみなさんも容易に想像できるだろう。
父の判断では、幼稚園に通っていた段階で、すでに小林少年は、田んぼや畑、山での仕事が手伝える年齢だった。
休日といえば二人の兄と一緒に、田んぼに、畑に、そして山に行ったものだ。山では、スギの苗を植え、苗の周囲の草を刈り、枝打ちをし、雪で傾いた幹を木やロープで垂直にした。
幼少の小林少年(三男坊!)にとっては結構、大変な休日だった。
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まー、生物まみれの生活だったと言ってもいいかもしれない。
一方で、小林少年は子どものころから「理屈」が好きだった。目や耳にする事物事象を因果関係にそって言葉で表現するのが好きだったのだ。 【新品】de pres デプレ トレンチコート S Aライン ロング丈,
小林少年は擦りきれるくらい読んだ。生物をめぐる「因果関係」の世界が広がっていく思いがしたのだ。
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虫、魚、鳥、哺乳類………さまざまな動物の行動や心理について、「進化の仕組みに照らすと、それぞれの種(しゅ)本来の生息地での生存・繁殖がうまくいくように組み立てられているはずだ」(“組み立てられている”というのは、行動や心理を生み出す脳内の神経の配線のつながり方がそうなっている、という意味である)という統一的な理論を携えて、野外や実験室で、まさに動物の息づかいを感じるくらい動物に密着して調べる一方で、それまでになかった新しい因果関係を説明する骨太の理論を次々と発表していた。
やがて私は高校の生物の教員になったのだが、シベリアシマリスをはじめ、カナヘビ、キュウカンチョウ、シクリッド(中南米、アフリカから中東、南アジアに生息する淡水魚・汽水魚)などを対象に、今思えば、ひたむきに、動物行動学をやっていた。もちろん教育活動の合い間に、あるいは教育活動に利用しながら。
そして、ここから本書の執筆につながる話題になるのだが、勤務校が遠くなり、電車で通うことが増えてきた私のなかに、動物行動学の新しい対象が現われ、だんだんとその存在感を増していったのだ。
その動物とは、………「ヒト」であった。
当時、ヒトの動物行動学(人間行動学あるいはヒューマン・エソロジー)の第一人者としてはオーストリアのアイブル・アイベスフェルトと、イギリスのデズモンド・モリスが知られていた。
両者とも、1973年に「動物行動学という学問の樹立」という、ちょっと異例の業績でノーベル生理学・医学賞を受賞した、いわば動物行動学の父(コンラート・ローレンツ、ニコ・ティンバーゲン、カール・フォン・フリッシュ)の一番弟子だった。つまり、アイブル・アイベスフェルトはコンラート・ローレンツの、デズモンド・モリスはニコ・ティンバーゲンの弟子だったのだ。
私は、ヒトについての論文を書きはじめたころ、そのなかの一つをアイブル・アイベスフェルトが審査してくれ、別の論文をデズモンド・モリスが審査してくれた(論文が学術雑誌に掲載されるためには、数人の審査員から、その論文が価値あるものだ、と認められなければならないのだ)。両者とも、私の論文を「大変価値がある」と評価してくれ、その判断のおかげで学術雑誌に掲載された。いや、二人とも見る目がある(正直、めちゃめちゃうれしかった)。
そういった出来事も、私がヒトの動物行動学をさらに深めていくきっかけになったような気がする。
ところで、私は、人間行動学に入っていく前、そしてその後も一貫して、あることを心に決めていた。
それは、「“ヒトの精神(脳の活動が生み出す行動や心理や思考の集合)と自然とのつながり”について研究する」ということであった。
「ヒトの精神と自然とのつながり」………それは、自分自身の体験から、そして、進化の仕組みを基盤にすえた理論的考察から、ヒトの本質を理解する重要な鍵だと感じていたのだ。そしてなにより、故郷での子どものころの思い出が、私に、「そうだ、それを研究せよ」と言い、私は「うん、やりたい。必ずやる」と答えていたのだ。
お墓に供えるキキョウやオミナエシを採りに兄と奥山に行き、周囲が一望できる山の頂上で、花を切りとりながら感じた植物の心地いいニオイ、飛び交うシジミチョウの美しさ。
父や兄と、真夜中の川を、アセチレンガスの光で照らしながら移動し、眠っている大きな魚たちを網ですくったときの感覚。網のなかで魚が跳ね、腕に伝わる重み。
愛犬トムと一緒に、山中の未知の場所を探検し、野山を駆けまわり、枯れ草の上に寝転んでトムに顔をなめられながらじゃれあった、あの空をつき抜けるような幸福感。
あげれば切りがない。自然や生物とのふれあいは、私のなかに眠っていた大切なものを目覚めさせて、引き上げ、伸ばしてくれた。そしてそのなかには、単なる、生物についての知識や直感的な洞察力だけではなく、もっと深い普遍的な力も含まれていたように思うのだ。 置き時計 振り子時計 スミスエンフィールド社,
自然のなかの事物事象は、それはそれは多様で、繊細に変化する。そんな対象を前に、脳は五感を駆使しながら、その正体を知ろうと、因果関係を探ろうと、喜んで挑んでいくのだ。
さらに思うのだが、私自身が自分のなかに見出す「よい」と感じられるもの(思いやりとか公平さなど)も、本来ヒトの脳に備わっているものが自然とのふれあいを受けて活性化したものではないだろうか。その活性化を後押しする一番目の体験が「ヒトとヒトとのふれあい」だとすると、「ヒトと自然とのふれあい」は1.5番目くらいになるのではないだろうか。
ちょっと話がずれてきた。
本書の話だ。
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ちなみに、「ヒトの精神と自然とのつながり」について(これまでも断片的には書いたことはあったが)まとまった形で一冊の本として書こうと思ったのは………、そろそろ機が熟したと思ったからである。17年前に、“野生生物の生息地の保全”が私の使命となる鳥取環境大学に勤務するようになり、また、私自身の研究も含め世界中で「ヒトの精神と自然とのつながり」に関連した研究が進んで科学的知見も増えてきたのだ。環境問題の根源である自然破壊の原因はヒトの活動であり、それなら、「ヒトの精神と自然とのつながり」について理解を深めることは、環境問題の解決に不可欠なことではないだろうか。そう思ったことも理由の一つだ。
それと、本書を書こうと決めた別の面からの理由として、「私に、わかりやすく文を書く力が、それなりについてきたかな、と思えるようになった」という点もある。その力が少しずつついてきたのは「先生!シリーズ」を書きつづけてきたことにもよると思う。
「先生!シリーズ」の番外編という形をとったのも、専門書では伝わりにくい内容を、わかりやすく表現したいという思いがあったのだ。たくさんの方に、わかりやすい文章で(とはいっても本家「先生!シリーズ」よりは硬いけれども)お届けしたいと思ったのだ。
さて、「はじめに」も終わりに近づいてきた。 MTG 真の名の宿敵 FOIL, MTG 暗黒の儀式 日本語 マジックザギャザリング,
動物行動学であるということは、考察の根底には、前半で書いた次のような原理があるということだ。
「進化の仕組みに照らすと、(行動・心理を生み出す脳は)それぞれの種本来の生息地での生存・繁殖がうまくいくように組み立てられているはずだ」
たとえば、「昼間は洞窟で、同種同士が寄り集まって天井からぶら下がって休息し、夕方になると洞窟を飛び出して、河川敷上空などを好んで飛翔して虫を捕らえる」という生活を送るモモジロコウモリの脳は、その生活に適応し、「超音波を解析して物体の形や移動状況を把握し、同種をニオイで識別してコロニー仲間に接近し、フクロウの鳴き声を認知して逃避や地上の隠れ場所に一時避難する」行動・心理を生み出すように組み立てられている。
モモジロコウモリ本来の生活に適応した脳を有している、ということだ。
これと同様に、「ヒトの脳も、ヒト本来の生活に適応した(つまり生存や繁殖がうまくいくような)自然に対する認知や行動・心理を生み出すように組み立てられているだろう」という原理を前提にして本書は書きすすめられている。
たとえば、一例だけざっくり言うと………。
ヒトの脳は“ヘビ”に対して敏感に反応する神経回路をもっているようだ。ドイツのマックス・プランク認知脳科学研究所のステファニー・ホッヘルたちは2017年、生後6カ月の赤ん坊を対象にした実験で、ヘビを見ると瞳孔が瞬時に大きく拡大することを発表した(ヘビ以外の生物、魚や花などへの反応も調べて比較している)。一方、世界的に著名な人類学者ジャレド・ダイアモンドは、世界各地の未開の自然民を調査し、死亡理由の上位に、“毒ヘビに咬まれる”ことがあげられると明らかにしている。それは、“ヘビ”に対して敏感に反応する神経回路を備えていることが、ヘビの発見やヘビへの警戒心の増大をもたらし、ヒトの生存に有利だったことを示しているのではないだろうか。「ヒトの脳も、ヒト本来の生活に適応した(つまり生存や繁殖がうまくいくような)自然に対する認知や行動・心理を生み出すように組み立てられている」からではないかと考えられるのだ。
このような動物行動学の原理を貫いた考察は、本書において一貫している。それは読んでいただければおわかりになると思う。
ちなみに読者のみなさんは、ここで、次のような疑問をもたれるかもしれない。
モモジロコウモリの本来の生活というのはわかりやすい。では、ヒトの本来の生活というのはどんなものなのか。今、世界中を見わたすと、ヒトはいろんな生活の仕方をしているではないか。
このような疑問をもたれたとしたら………あなたは、えらい!
この疑問は人間行動学においても、進化生物学においても、重要な点と考えられている。そして、これまでの研究でほぼ一致している「(ヒトが適応した)ヒト本来の生活」として、次のような表現をしている。
「(ホモ・サピエンスの歴史、約20万年の9割以上を占める時代において一貫して続けてきた)自然のなかでさまざまな野生動植物を獲得して食料にした狩猟採集の生活」
狩猟採集の場所は、ホモ・サピエンス誕生のときから、世界中へと広がるなかで、どんどん増えていっただろう。サバンナ、森、海辺、雪原………。しかし、「自然のなかでさまざまな野生動植物を獲得して食料にした狩猟採集の生活」という点は、農耕や牧畜が始まった(諸説あるが、長いほうを採用して)約2万年前までは不変であっただろう。
農耕・牧畜の始まりと拡散以降、それらの生活への遺伝的な適応も起こってきたと考えられているが、ヒトの精神の基本構造は、自然のなかでの狩猟採集に遺伝的に適応していると考えるのは科学的に妥当だろう。
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嘘だと思われるのなら、あと5ページめくって本文を読んでみていただきたい。 デジタル壁掛け・置き時計,
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